子育てのイライラに関するお悩みを「感情のプロ」が軽くしていくこのコーナー。
前回は「怒り(イライラ)」ってそもそも何なの?といった根本的なお話しや、イラっとしたときに感情に振り回されずにすむためのテクニックをご紹介しました。
アンガーマネジメントはトレーニング!
日々の生活の中で少しずつ実践し、少しずつ身につけていってくださいね!
さて二回目となる今回は「イライラが止まらない」というお悩みに関してです。
前回の記事でも「後悔につながりやすい4つの怒り方」というところで書きましたが、イライラの頻度が高い、しょっちゅうイライラしてしまう、というのは本人も周囲も辛いものですよね。
今回はそんなお悩みにどう向き合っていけばよいのか、心の仕組みを解説しながらお伝えできればと思います。
怒りは第二次感情
上のコップの絵を見てください。コップいっぱいに水が入って、溢れていますね。
実はわたしたちの心も、このコップと同じ仕組みになっています。
わたしたちは誰しも「心のコップ」を持っています。
そのコップの中には、日々さまざまな感情が入っていくのですが、ここからがポイント、このコップにたまっていくのは「ネガティブな(と呼ばれる)感情だけ」なのです。
さて、今日起きてから今まで、あなたの心のコップにはどんな感情が入りましたか?
そして今、どんな感情がたまっていますか?
これから、過去実際に一人のお母さんからご相談いただいた「イライラが止まらなかった一幕」をもとに、心のコップの解説をしていきます。
どうしてこのお母さんのイライラが止まらなかったのか、心のコップの中を想像しながら読んでみてくださいね。
4歳男児、1歳男児のお母さん 夜イライラが止まらない…
- 夕食後、「まだ遊ぶ!!」と言ってなかなかお風呂に入りたがらない子どもたち。何度声をかけても聞く気配なし。時間だけがどんどん過ぎ、もうこんな時間!大変、また明日起きられなくなっちゃうじゃない。
→(何度声をかけても効果がなかったことに対する)虚無感&焦り
- 「鬼が来るよ!」の一声でどうにか入浴。あーぁ、また脅しちゃった…時間を少しでも節約したくて、子どもたちが湯船に入っている間に自分はシャワーで洗髪。本当は温かいお湯に入りたいけど我慢するしかないよね…
→(脅したことへの)罪悪感&寒い
- 機嫌よく歌っている子どもたち。か、かわいいけど、、お風呂場で響きすぎて爆音。
→うるさい&(子どもの歌声さえかわいいと思えない自分への)自己嫌悪
- さっきまで仲良く過ごしていたはずなのに、急に兄弟げんか勃発!お湯の中で叩き合うなんて危ないじゃない!
→危機感(子どもたちの安全を守らなければ!という防衛感情がオンに)
- お風呂くらいゆっくり入りたいのに、なんで私ばっかり毎日こんななのよ…(夫への不満)
→不公平感&寂しさ(自己価値が下がる)
- まだ遊びたがっている子どもたち。結局大声で怒鳴って急かしてどうにかお風呂タイム終了。
→(ずっと急かしていることへの)疲れ&(怒鳴った自分への)自己嫌悪
- やっとのことで子どもたちを寝かせてふと気づいた。わたし、イライラしっぱなしだ。そしてずっと怒ってる。あの子たち、そんなに悪いことしていなかったはずなのに、ごめんね…どうしたらいいんだろう。。
→申し訳ない&後悔&(どうしたらこの状況が解決するのかが分からない)行き詰まり感&不安
- 誰もこの状況を見てくれてないし、評価も感謝もされないんだよね。なんか寂しいな…
→孤独感、寂しさ、空しさ
夜はただでさえ疲れています。
精神的にも体力的にも、そして時間的にも余裕がない中で、一人で必死に何とかやるべきことを進めようと頑張っていたお母さんの姿は、今この記事を読んでくださっているあなたの姿とも重なるかもしれませんね。
短時間の間にさまざまな感情が生まれ、そしてそれらが次から次へと心のコップに入っては溜まっていきました。
そして、コップはあっという間に満杯に。もうこれ以上入らない、という状態になってあふれ出たのが「怒り」です。
太字で書いた感情(=第一次感情)の中に「怒り」というものはありません。怒りはあくまでも第二次感情。
怒りとは違う感情がいっぱいになって溢れ、「怒り」という形に姿を変えて表面化しているのです。
心のコップにネガティブな感情をずっと溜めたままにしておくことはできません。
自分で自分の心の健康を保つために、喜怒哀楽の中で一番エネルギーの大きい「怒り」に変換して吐き出し、コップを空っぽにしようとしているのですね。
イライラが止まらない、というのは、心のコップが溢れ返っている状態が続いている、ということ。
そうなるまで頑張っているよ、ということの表れです。
イライラが続いているな、と感じたら、まずは自分がそういう状態にあるんだと気が付きましょう。
そして、どんな第一次感情が自分の心の中にたまっているのかを見ていくようにしてください。
それら一つ一つを解決していくことで、心のコップに少しずつ余裕を作ってあげられるようになります。
心のコップを空にするには?
イライラは、実は怒りとは違う感情が溢れ返って目に見える形となって表れたものだ、ということをご理解いただけましたでしょうか?
イライラを止めたい!と思うのであれば、その根本原因である第一次感情を減らしていくことが効果的です。
ここからは、どうやってその第一次感情を減らして、心のコップに余裕を持たせるかについてお伝えしていきたいと思います。
第一次感情を減らす方法 その1 具体的にできる対策、解決策を考える
アンガーマネジメントはソリューションフォーカスアプローチとも呼ばれています。
ソリューション、つまり「解決策」に焦点を当て「じゃあどうしていこうか?」を探していく問題解決型の考え方です。
今回の例で挙げた第一次感情の中にも、具体的に解決策を探すことで解消しそうなものがいくつかありました。
例えば「寒い」や「うるさい」「危機感」など。
命にかかわる感情は、防衛感情に直結するためイライラ指数をグッと上げます。
これらの感情を生み出さないようにするにはどうしたらよさそうでしょうか?
何か具体的にできることはありそうですか?
「寒い」を解消するのであれば、シャワーの設定温度を上げる、短時間でも湯船につかるなど、すぐにできることがいくつかありそうですよね。
「うるさい」も同様です。
「お風呂の中は音が響くから、このくらいの大きさの声で歌ってね」と具体的な音量を示すと子どもにも伝わるかもしれません。
うるさいと思うなんて、わたしって嫌なお母さん…と思いながらネガティブな感情を溜めていくよりよっぽど前向きです。
それから「危機感」。
これも、溺れたりけがをしたりするリスクから子どもを守る、という防衛本能(=怒り)がオンになっているからこそのイライラですから、理にかなった感情です。
危ないな、と感じる場面では、子どもをお湯から出すなど、状況そのものを変えてしまった方が得策です。
このように、「今何ができそうか」を探していくことで、第一次感情を減らしていくことができます。
第一次感情を減らす方法 その2 必要以上に増長させない
具体的に今からできそうなことが見つかればよいのですが、残念ながら「今すぐにはどうにもできない」という現実があることも事実です。
そういうときには、まず今はそういう状況にある、ということを受け入れましょう。
例えば、何度声をかけてもなかなか次に進むことができなかったことへの虚無感や、その結果鬼に登場してもらわざるを得なかったことへの罪悪感などです。
自分の中に理想の展開はあったかもしれません。
でも、その理想に縛られて、その通りにいかなかったことを責めたり自信をなくしてしまっているとしたら、それは自ら新たなイライラのタネを撒いているようなものです。
できる限りのことをやった、ということを大切にして、それでも今のこの時点においてはあれが精いっぱいの結果だったということを、まずは受け入れてみてください。
本当によくやったわけですから。
そして、その中でできそうなことがないか探してみると気づきがある感も知れません。
例えば、漠然と「早くしなさい!」と声をかけるより「時計の針が2になったら」など、具体的な目安を示すことで動きやすくなるかもしれません。
決めた約束に従って行動することを繰り返してそれが習慣になれば、時間だけが空しく過ぎていく、という状況からは解放されることでしょう。
一度にすべてを解決することは難しくても、その中でできそうなことを探していくと、小さなヒントが見つかるかもしれません。
第一次感情を減らす方法 その3 ポジティブな感情で中和する
そして、できたことやうまくいったこと、嬉しかったことなど、ポジティブな感情を意識的にコップの中に入れていくこともとても効果的です。
日常の中では、確かにポジティブな感情も感じています。
つい、できなかったことやイライラしたことに意識を向けてしまいがちですが、ポジティブな感情を今より丁寧に扱っていくことで、ネガティブな感情を中和して消していくこともできます。
よかったことに目を向ける。たったこれだけで、驚くほど自分の気持ちは変わります。
気持ちが変われば、心のコップの中に入っている第一次感情が変わり、そして結果としてイライラの頻度や強さも減ってきます。
忙しい毎日ですが、「今日はどんないいことがあったっけ?」と思い返す習慣をつけていくと、確実に日常は変わっていきますよ。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、心のコップというイメージで、感情の仕組みについてお伝えしました。
わたしたちは、怒りたくて怒っているわけではないのです。
その下には必ず、怒りとは違う第一次感情があります。
心のコップにたまった第一次感情を少しずつ減らしていくことができれば、イライラも確実に減らせます。
イライラが止まらない、と感じることがあったらぜひ今日のお話を思い出してみてください。
コップがいっぱいになるまで頑張ってきた自分を労って、自分の頑張りを充分に認めてあげてくださいね。
それだけで、心のコップはかなりスッキリ空っぽに近くなりますから。
今日の内容が、少しでもどなたかの心を軽くすることにつながっていれば嬉しいです。
加藤 聡子(かとう さとこ)/子育てカウンセラー。6歳までのお子さんを持つお母さんのイライラに寄り添い、笑顔で子育てを楽しめるためのお茶会や講座、個人セッション、グループ継続コンサルなどを展開している。
初めての子育ての不安と孤独、疲れでイライラが募り、子どもに辛くあたっては後悔と自己嫌悪を繰り返した自身の経験が活動の原点。このままでは子どもか自分のどちらかがおかしくなるという危機感からアンガーマネジメントを学んだことで、少しずつ自身の子育てが楽になったことから、次男妊娠中に講師養成のトレーニングを受ける。以降、自治体や学校、子育て支援団体からの依頼を受け、子育て中の保護者に向けての講座に数多く登壇。これまでのべ500人以上の保護者にイライラとの上手な付き合い方を伝える。一般社団法人日本アンガーマネジメント協会 アンガーマネジメントファシリテーター/アンガーマネジメント叱り方トレーナー
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