少子化親の高学歴化を背景に近年、私立小学校の受験者数が上昇の一途をたどっています。
少し前までは、都市部の一部の世帯だけのものというイメージが強かった小学校受験。最新の傾向はどのようなものなのでしょうか。
また、小学校受験を意識した幼児教育にはどのようなことが挙げられるのでしょうか。
小学校受験で考査の対象となる5つの項目から受験に必要な幼児教育の視点をご紹介します。
上昇する私立小学校の受験数
文部科学省が実施している「学校基本調査」によると、受験しなければ入学することのできない私立小学校の児童、つまり「私立小学生」は近年上昇の一途をたどっていることがうかがえます。
小学生全体の構成比からすると1%代とまだまだ少数派ではありますが、1990年から2016年の26年間で0.68%から1.21%へと2倍の膨らみを見せているのです。
少子化の影響で小学生が937万人から639万人へと300万人近く大きく減少していることを考えると、この2倍の膨らみは注目すべき点であると言えるでしょう。
小学校受験の受験者数が増加している理由として、以下の3つの社会背景が考えられます。
①親の高学歴化
現在の子育て世代の中でも、特に30代以下に焦点を当てると、男性の大学進学率が4割、女性は3割を超えています。
私立の高額な学費を払い続けることは、子育て世帯にはたやすいことではありませんが、それでも自分が受けてきた以上の教育を小学生の早いうちからわが子に与えてやりたいと思う親が増えていると言えるでしょう。
②共働き世帯の増加
かつて、子どもができると母親は、一旦は家庭に入り、ずっと専業主婦として生活するか、子に手がかからなくなる頃からパート職などに就くというのが一般的でした。
しかし最近では、男女雇用機会均等法の改正や働き方改革の影響を受け、父親並みに働く母親が増えています。
まだまだ一部の世帯に限られた話ではありますが、若い世帯の中には私立小学校の学費を払える余裕がある保護者も増え始めていることが考えられます。
一方で、1990年代の就職難の影響を受けている世帯や収入格差が課題となっているような背景もあり、子育て世帯の教育格差も存在するのが実際のところです。
③公立小学校への不安と中高一貫教育への期待
教育格差やゆとり教育による学力低下が叫ばれ久しい現代の日本。
そうした影響をまともに受けることになる公立小学校への入学を不安視する親の存在も、私立小学校への受験が増えている理由です。
中高一貫教育が待っている有名私立小学校の中には、中学以降の受験がないことで自由に自分の好きなことができる校風があります。
中には、早くから提携先の海外の学校へ留学する道を選び、語学スキルをアップさせて外資系企業への就職を目指す生徒や音楽やスポーツなどに専念し、その道で生きていきたいと考える人もいるようです。
このような背景は今後も増加の一途をたどることが推測されるため、今度もますます小学校受験への熱は高まり続けるでしょう。
小学校受験を考えるためのポイントとは?
ここでは、そんな小学校受験を考える際に知って起きたいポイントについてご紹介します。
間違った学校選びをしない
最も重要なポイントが、学校選びです。そのためには、小学校受験をすると決めた早いうちから、積極的に学校説明会へ赴く必要があります。
その際、家庭の教育方針や子ども自身がその学校にあっているかを保護者がしっかりと見極めなければなりません。
説明会で把握したいポイントは、学校の理念や教育方針、そして入試の考査についてです。
受験準備は、小学校受験をすると決めたその日から始まっていると言えるのです。
付け焼き刃の教育では合格できない
質の高い小学校への入学を希望すればするほど、付け焼き刃的な幼児教育では合格することはできません。
なぜなら、「あいさつをする」「お箸が持てる」「人の話が聞ける」「友達とコミュニケーションが図れる」といった、毎日の積み重ねで子どもに伝えるべき内容が合否の判断材料とされているからです。
専門家の中には、小学校受験への対策は子どもが生まれたその日から始まっていると考える人もいるほどです。
5つのポイントからわかる、小学校受験に必要な幼児教育
多くの小学校の受験で採用されているのが、「プリント」「行動観察」「運動」「絵画・制作」「面接」の5つの考査ポイントです。
それぞれについて幼児教育で心がけたい視点と合わせてご紹介します。
①プリント
およそ半数の小学校でプリントを用いた考査がおこなわれています。
この考査でチェックされるのは、以下の力です。
・年相応の学力
・人の話を聞く力
・指示通りに対応する力
プリントを用いて考査が進められる項目ではありますが、大人が机上で教え込んで取得できる力ではないため、日頃から手や体を使って自分で答えを導き出す力、それを自分の言葉で説明できる力を養う必要があります。
②行動観察
大半の小学校入試で実施されるのが行動観察です。
考査ポイントは以下の力です。
・友達とのコミュニケーション力
・道具を扱う力
・ルールを守る力
・工夫する力
・集中力
・会話力
・生活技能(整理整頓など)
日頃から保護者が見本となり基本の生活習慣を身につけさせることと積極性や素直な心を養う必要があります。
③運動
運動も、多くの小学校が入試項目として採用しています。
考査されるのは以下のような力です。
・基礎体力
・ルールを守る力
・友達と遊ぶ力
・連続運動
・特定の運動技能(ボールを投げ・キャッチ、ケンケン、ワンバウンドパス、模倣体操など)
規則正しい生活に加えて、毎日の散歩や荷物を持つこと、また公園遊びなどを通して全身の筋力を鍛えておくことが重要となります。
また、栄養バランスのとれた3食の食事をしっかりと摂取することも重要です。
④絵画・制作
小学校によって出題内容に違いはありますが、「豊かな生活体験」を考査のポイントとしている点では共有です。
この考査で見られる力は、以下の点です。
・感性
・指示を理解する力
・発想力
・思考力
・手先の器用さ
難しい課題が出されることも多いため、日頃からハサミやクレヨン、のりなどを使えるようにしておくことが必要です。
また、自分が作りたいものを短時間で頭の中にイメージし、何をどのように工夫して描いたのかを伝えられる技術を取得しておくことも重要となります。
⑤面接
中には、面接がおこなわれない小学校もありますが、多くの場合必須項目となっています。
この項目については、実際に保護者の考え方や姿も考査の対象となるため、以下のような事前の準備が必要となります。
・志望理由
・教育方針
家族間で志望理由や教育方針にズレが生じている場合もありますが、受験の日までにしっかりと話し合い、面接に臨む必要があります。
小学校受験を意識することで、より質の高い幼児教育が実現できる
小学校受験の項目の中には、「絵画・制作」や「面接」のように、受験のために特別に準備をしなければならないものも含まれますが、考査の対象となる知識や技能のうち多くのものが、受験をしない場合でも幼児教育として重要視される力ばかりです。
ぜひ、小学校受験を意識しているご家庭では、受験に縛られすぎることなく、レベルの高い幼児教育を実現する手段という視点を持ち、わが子に向き合ってみてください。
「受験を利用する」くらいの感覚でいるのが望ましいのかもしれません。
また、小学校受験を意識していないご家庭でも、受験内容を把握しておくことで、より質の高い幼児教育を与えるヒントを得ることができると言えるでしょう。