幼稚園における幼児教育とは?国内外の有名教育メソッドから知る特徴一覧

  

幼児教育とは乳児期を卒業し、幼児期と呼ばれる1歳前後以降の子どもが、家庭内外で受ける教育全てのことをさします。

特に、3歳以降の子どもたちが通う幼稚園では、昔から家庭外での幼児教育を専門的におこなっており、幼児教育のスペシャリストと捉えることもできるでしょう。

近年の幼児教育熱の高まりを受け、スペシャリストである幼稚園でも様々な教育法が取り入れられています。

今回は、幼稚園における幼児教育について、国内外の有名な教育メソッドとともにご紹介します。

幼稚園における幼児教育とは?


学校教育を管轄する国の機関である文部科学省は、幼稚園は学校教育のスタート地点と提言しています。

また、3歳から小学校に入学するまでの子どもの教育過程は、全国で統一された文部科学省が告示している「幼稚園教育要領」に基づいて決められます。

幼稚園における幼児教育を考える上で忘れてならないのが、この時期の子どもにとって「遊び」こそが重要な学習とされている点です。

そのため、小学校以降の教育とは違い、教科書を使わずに遊び中心の活動から学ぶことが国によって定められているのです。

一見すると、幼稚園でおこなわれる「遊び」と小学校以降で学ぶこととなる「国語」や「算数」とはつながりがないように感じるかもしれませんが、幼児期の子どもたちは遊びを通して人とのコミュニケーション能力や言語力、また自然の美しさや不思議に気づくことで、以降に続く学習の基盤を形成すると考えられています。

幼稚園では具体的に以下のような幼児教育を実践する場であると決められています。

道徳性を芽生えさせる

平成12年4月から実施されている教育要領では、物事の良い悪いを区別させ、他人への思いやりや社会的なルールを身につけさせるなど、道徳性を重視した幼児教育が盛り込まれています。

幼稚園教員には、個々の子どもを理解し、子どもが自主的に気づき考えることを尊重しながら、集団生活を通して道徳心が育まれるよう指導することが求めてられているのです。

綿密な計画をベースとした「遊び」

先述の通り、幼児期の子どもにとっての遊びは非常に重要なものですが、ただ放っておいては意味のある遊びが生まれるとは考えられません。

幼稚園では先生が個々の子どもの発達に応じて必要な経験を見通し、指導計画を立て、継続的な指導をおこなう必要があるとされています。

具体的には、子どもに応じた適切な援助や遊具の工夫などが挙げられます。

また、幼稚園教員には専門知識が必要とされており、職に就くためには教員免許が必須です。

加えて、指導計画の立案や日々の指導について、先生間で議論を重ねたり、必要に応じて研修会や講座に参加するなどしています。

ちなみに、2018年4月から施行された「保育所保育方針」の最新の改定では、保育所と幼稚園での教育要領は実質同じとなっています。

国内の有名教育メソッド

国内にはいくつかの有名教育メソッドと呼ばれる教育法があります。

ここでは以下の3つについてご紹介します。

ヨコミネ式教育法

プロゴルファーの横峯さくらさんの伯父、横峯吉文氏が作り上げたことで知られている教育法です。

「全ての子どもが天才である」という考えに基づき、様々な子どもの力を育むことに特化しています。

テレビでも「5歳児全員が逆立ちできる」と取り上げられているのをご覧になられた方も多いでしょう。

その他にも、「1,500冊以上の本を読破」「卒園までに掛け算をマスター」「英語劇を20本行える」など、これまでの幼児教育とは比較にならないレベルで幼児の力を引き出すとして、注目を集めています。

七田式教育

日本の英語教育・幼児教育・右脳教育の第一人者として世界から認められた七田眞氏によって提唱された教育法です。

「できる人は潜在意識を上手に使い、なりたい自分をイメージして夢を実現させている」という考え方が根幹にあります。

石井式国語教育

教育学博士である石井勲氏が40年にわたる教育実践から生み出した指導法です。

特徴は、「幼児期からの漢字教育」に力を入れる点。

幼児期の子どもが持つ不思議な力、特に言葉の教育の重要性に着目し、「幼児期の言語教育こそが人間の知能を決定する働きをし、能力を大きく飛躍させる鍵となる」と言う信念に基づき「石井式漢字教育法」が生み出されました。

この教育法を実践する教室からは言葉が豊かで素直、また品格のある子どもたちが育っていくとされています。

海外の有名教育メソッド


続いては、海外で生まれた有名教育メソッドについて3つご紹介します。

モンテッソーリー教育

20世紀初頭にイタリアで医師として働いていたマリア・モンテッソーリによって確立された教育法です。

この教育法を受けた子どもの中には、のちに世界で大活躍する人が大勢含まれています。

一例には、Amazonを創設したジェフ・ベゾス氏やGoogleの共同創設者であるセルゲイ・ブリン氏、アンネ・フランクもその1人だったと言われてます。

こちらの教育法の基本となっているのは、「子どもは、自らを成長・発達させる力をもって生まれてくる。

大人(親や教師)は、その要求を汲み取り、自由を保障し、子どもたちの自発的な活動を援助する存在に徹しなければならない」という考え方です。

世界で最も有名な教育法で保育の教科書にも取り上げられているようです。

シュナイター教育

こちらはオーストリアの思想家ルドルフ・シュタイナーが提唱した教育思想です。

「教育という営みは、子供が『自由な自己決定』を行うことができる『人間』となるための『出産補助』であるという意味で、『一つの芸術』である」という哲学者であるシュタイナーらしい深さの感じられる思想となっています。

有名な3つの理論では、子どもの性格を4つの気質に分けるなど、その独特かつ納得度の高い教育思想が世界中で注目されています。

「テレビや絵本を見せない」「早期教育はしない」など、一見非常識に思える教育法にも彼の深い考えが詰まっている魅力的な教育思想です。

レッジョ・エメリア・アプローチ

イタリアのレッジョ・エミリア市を発祥とする教育法で、近年日本でも注目されています。

1991年に「世界で最も優れた10の学校」において、そのうちの1つが実践していたことで有名となりました。

「個々の意思を大切にしながら、子どもの表現力やコミュニケーション能力、探究心、考える力などを養うこと」を目的に教育が進められます。

大きな特徴は3つ、「自主性と協調性を育むプロジェクト活動」「美術専門家の配置にアトリエ…創造性を育む環境」「記録を活かしたドキュメンテーション」です。

いずれも独特な教育法ですが、専門家の中には今の時代に合っていると感じる人もおり、これからますます注目される教育法であると言えるでしょう。

子どもや家庭の考え方に合った教育法を


遊びを通して小学校以降の学習の基盤を作るのが幼稚園ですが、そのアプローチは園によって様々です。

世界的に有名な教育法を取り入れているところがある一方、昔ながらの独自のアプローチを続けている幼稚園もあります。

重要なのは、当人となる子どもや各家庭の考え方に合った幼稚園を選ぶこと。

いずれにせよ、どこかに無理が生じていれば快適な幼稚園生活を送ることはできません。

日頃から幼児教育についての考えを深め、家庭で議論を進めていく必要があるでしょう。