寝ていることが多い1歳ごろまでの時期をすぎると、“赤ちゃん”だった乳児から幼児と呼ばれる時期に差し掛かります。
それまで泣いたり微笑んだりするしかなかった意思表示の方法も徐々に豊富になり、自我の芽生えとともに急速な成長が見られる時期に差し掛かります。
そんな幼児期に差し掛かるとパパやママの間で気になり出すのが「幼児教育」ではないでしょうか?
今回は、そんな幼児教育についてまず知っておきたい基本的な情報や注意点について、ご紹介します。
そもそも幼児教育とは?正しく知っておきたい言葉の意味
「幼児教育」という言葉が盛んに使われるようになって久しい現代の日本。
正しい意味を理解して使っている人は案外少ないように思います。
ここでは、文部科学省が規定している言葉の意味を確認することで、今一度正しい幼児教育のあり方について、考えたいと思います。
平成16年9月29日に文部科学省がおこなった「初等中等教育分科会(第28回)」で配布された資料「資料2子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の在り方について(中間報告)(案)」によると、幼児教育は以下のように規定されています。
<以下引用>
幼児教育の範囲
幼児とは,小学校就学前の者を意味する。
幼児教育とは,幼児に対する教育を意味し,幼児が生活するすべての場において行われる教育を総称したものである。
具体的には,幼稚園における教育,保育所等における教育,家庭における教育,地域社会における教育を含み得る,広がりをもった概念として捉えられる。
「幼児教育」と耳にすると多くの保護者が小学校に上がる前の子どもに向けた特別な教育方法を思い浮かるのではないでしょうか?
しかしながら、国が規定する正確な意味では、未就学児の生活の中でおこなわれる全ての教育についてを幼児教育と呼び、普段から家庭でおこなわれている基本的な生活習慣についての教育や躾なども含まれることがわかります。
具体的な幼児教育の中身とは?
先ほどご紹介した通り、幼児を取り巻く全ての環境において実施される教育を、幼児教育と呼びますが、ここでは具体的な幼児教育の中身について、家庭と家庭外に分けてご紹介します。
家庭での幼児教育とは?
人が生きていく上で最も重要となる教育をおこなうのは、家庭です。
「あいさつをする」「ありがとうと言う」といった人としてあたり前にできなければいけないことは、家庭で学ぶこととなり、幼児教育の基本となります。
国や専門家も「家庭教育がその後に受ける教育のスタートとなる」としており、その重要性をうかがい知ることができます。
家庭での幼児教育を始める時期を明確に定めたものはありませんが、子どもが大人の言葉を理解し反応を示し出す1歳前後から、本格的に取り組み出す家庭が多いと言えるでしょう。
家庭外での幼児教育とは?
家庭以外での幼児教育については、各家庭の子ども達が置かれている状況によってその内容やスタートに違いがあります。
保護者が全員働いている家庭では、早い子であれば0歳児のうちから保育所に通いますし、幼稚園から集団生活に入る子であれば、5歳になってやっと家庭外での幼児教育がスタートするというケースもあります。
ここでは、それぞれに分けてご紹介します。
・保育所での幼児教育
1965年に制定されて以降、適宜改定がなされている「保育所保育方針」という国が定めた保育所での幼児教育についての方針があります。
以前の考え方では保育所は家庭の代わりであり保育士は子どもを預かるだけ、という限定的なものでしたが、幼児教育の研究が日本でも進むようになり、独自の専門性が求められるようになりました。
2018年4月から施行されている最新の改定では、「3歳児以上」の保育は実質幼稚園教育要領と同じになりました。
具体的には、「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」の5領域の保育のねらいおよび内容が共通になっています。
「3歳未満児」については、保育所独自の領域で、以下の「3つの資質能力」に着目して幼児教育が進められることになります。
①個別の知識・技能
乳幼児期でいうと「気づくこと・できること」です。
例えば、お茶を入れたコップを斜めにして持つと、中身がこぼれてしまうことに気づくという知識です。
②思考力・判断力・表現力
子どもが自分なりに関わる事象に考えることです。
一瞬立ち止まりママや保育所の先生がやっていたな!と思い出して考える。試したりやってみたりして、自分で工夫する力を指します。
③学びに向かう力・人間性等
心を動かされる体験をして、「面白い!不思議!きれい!何かな?」などの思いやそこから生まれる意欲によって好奇心が働き、チャレンジする動機や態度を形成します。
・幼稚園での幼児教育
先述の5領域について、3歳児以上を対象に指導されます。
保育・幼児教育の第一人者で白梅学園大学の特任教授である無藤隆氏は、5領域において「3つの資質能力」を伸ばすことで、5歳児修了までに育って欲しい姿を以下の「10の姿」として提言しています。
①健康な心と体
②自立心
③協同性
④道徳性・規範意識の芽生え
⑤社会生活との関わり
⑥思考力の芽生え
⑦自然との関わり・生命尊重
⑧数量・図形、文字等への関心・感覚
⑨言葉による伝え合い
⑩豊かな感性と表現
・習い事での幼児教育
習い事による幼児教育を始める時期は家庭によって様々ですが、早期化している傾向にあり、早い人では0歳の頃から英語などの語学や知育教室、水泳や音楽のクラスに子どもを通わせる人もいます。
いずれの習い事についても、初めのうちは複雑な技能を学ばせるものではなく、基本的な生活習慣の延長や身体能力に合わせたレッスンであることが多いです。
幼児教育をはじめる前に知っておきたい3つの注意点
妊娠中や乳児期から積極的に幼児教育について考える保護者は増加の一途をたどっています。
正しい知識に合わせて、覚えておきたい幼児教育における注意点をご紹介します。
子どもの自主性を優先させる
生活習慣の教育や躾とは別に、保護者が特定の幼児教育をどれだけ受けさせたいと思っても、子どもが興味を持たない限りは良い結果に繋げることは難しいと言えます。
まずは、子どもをよく観察することで、何に興味を持ち意欲を出して上達の道に迎えるのかを知ることから始める必要があります。
達成感という喜びを体験させる
子どもが興味を持った幼児教育にチャレンジしてみると、達成感を得ることができ「できた!」という喜びを感じることができます。
この達成感は成長の何よりのポイントです。
そんな貴重なタイミングで、家族が一緒に喜び、褒めることでさらなる意欲の向上や上達が実現され、成長へと繋がります。
失敗することももちろんありますが、保護者が励ましサポートすることで、意欲がわくきっかけとなり、子どもを成長させてやることができます。
家族で楽しむ
家庭内での幼児教育はもちろんのこと、幼児期から始める習い事には、家族で一緒に楽しむことができるプログラムも多く存在します。
幼児教育を成功させるポイントの1つに、「やらせる」のではなく「一緒に」という親の心構えが挙げられます。
家族で喜びや悔しさを共有することが、健やかな幼児の成長につながると言えるでしょう。
日常の中に溢れる幼児教育の場面
特別なことを子どもにしてやりたいと思うのは、多くの保護者の思いですが、当時教育について考えるときは、その思いは一度見直さなければならないのかもしれません。
あいさつやお手伝いをきっちりと子どもに教えることから、幼児教育の意識を持ちたいものですね。