幼児教室と幼稚園、名前こそ似ていますがその存在意義や教育方針など内容は似て非なるものです。
今回は、乳幼児を持つママとパパに向けて幼児教室と幼稚園の違いを様々な角度からご紹介します。
幼児教室と幼稚園の違い
幼児教室とは?
幼児教室とは、0歳の乳児から6歳の未就学児を対象として、様々な教育が実施される教室のことをさします。
ママやパパ世代が子供だった頃から主流だった「子供向けの塾」とは特徴が異なり、「幼児教育」に焦点を当てていることが大きな特徴となります。
幼児教室では言葉や数字・計算などいわゆる“お勉強”的なことも学習しますが、それだけではない点が子供向けの塾と異なる点です。
最新の幼児教育研究では、未就学児を含む乳幼児に大人から一方的勉強を押し付けると良い効果をもたらさないことが明らかにされています。
幼児教室ではそうした点にも着目しており、あくまでも「コミュニケーション」や「遊び」を通して子供の自主的な力を伸ばすことに注力しています。
幼児教室の中には小学校受験を目標にして運営されているクラスや英語や音楽をメインに指導している教室もあります。
各々の幼児教室の特徴を親がしっかりと把握して、家庭の教育方針に従って最適な教室を選ぶ必要があるでしょう。
また、大きな意味で幼児教室は習い事の一環と言えるため、あくまでも利用は家庭の教育方針によって左右されます。
一方、義務教育ではないものの現在の日本では、ほぼ全ての幼児が幼稚園に通います。
そうした点では、その存在意義に大きな違いがあると言えるでしょう。
加えて、公立幼稚園を中心に目安となる保育料がある幼稚園に比べると、民間が独自で運営することの多い幼児教室では利用料にバラツキがあるのが特徴です。
幼稚園とは?
幼稚園とは、「学校教育法」と呼ばれる法律に基づいて運営される文科省が所管する“学校”です。
現在の日本では、3歳から小学校入学前の子供は、全国どこでも国が定める共通の教育課程に基づいた教育が受けられることになっています。
最近では、3歳になった4月を待たずとも、3歳の誕生日を迎えた時点で入園できる幼稚園も増えています。
習い事である幼児教室は、ほとんどの幼稚園が保育を終了している夕方に子供の受け入れを行なっているのに対し、幼稚園は9時〜14時と日中に保育時間を設定しています。
このことから、幼稚園は幼児の平日の生活基盤となる存在であることが伺えます。
民間が運営する幼児教室では指導者に当たる先生にどのような免許を求めるかは、企業が独自に決定しています。
しかし、法令に基づき運営される幼稚園では、私立・公立のいずれにおいても「幼稚園教諭免許」を持った指導者でない限り“先生”としての指導は行えません。
幼児教室と幼稚園の方針の違いを比較
続いては、幼児教室と幼稚園の教育方針の違いについて、それぞれの特徴を挙げてご紹介します。
幼児教室の教育方針とは?
幼児教育の方針について、具体的に1つの物を挙げることはできません。
なぜなら、それぞれの幼児教室で掲げている教育方針や力を入れている教育メソッドが異なるからです。
幼児教室選びは教育方針選びと言っていいほど、各教室が多様な方針を展開しています。
ここでは、日本を代表する有名幼児教室が掲げている教育方針を3つご紹介します。
「どんちゃか幼児教室」
子供には独自の世界や文化があると考え、それらを大切に教育を進めることをモットーにしています。
そのため、大人が子供の世界にテーマを合わせることが指導の大きな特徴で、使われる教材もまるで絵本に入り込んだかのような子供がワクワクできるものが使われます。
指導で注力されるのは、生きるために必要な「人前力」「競争心と思いやり」「思考力と理解力」「集中力」「勇気とガマン」を伸ばすこと。
保護者も一緒にマザーリングと呼ばれる幼児教育的な指導が受けられる点も、特徴の1つです。
「くぼたのうけん」
創業者が脳科学者である夫の理論に基づき立ち上げた背景からも分かる通り、脳の発達に基づいた指導が行われる点が特徴です。
最新の脳科学に基づいて考え出されたオリジナルの教育メソッドで、賢い脳を育てるための土台作りを目指しています。
子供の成長や月齢に合わせた独自の育脳グッズを利用できる点も人気で、これらのグッズはWEBショップでも購入することができるのほどの人気ぶりです。
「七田チャイルドアカデミー」
脳科学に基づいて、天才的な能力を引き出すことができるとされている右脳教育に特化しているのが特徴です。
右脳が最も発達するのは3歳までの乳幼児。
その時期に着眼している点もこちらの幼児教育の特徴でしょう。
また右脳教育には心の教育が重要になると考えられているので、既存の幼児教育の枠にとどまらず食育にすら分野を伸ばしています。
オリジナル教材も豊富で、幼児教室の代名詞でもあるフラッシュカードにも力を入れています。
幼稚園の教育方針とは?
幼稚園の教育方針を確認する際、重要となるのは公立と私立の違いです。
・公立幼稚園
公立幼稚園は国によって全国で統一された教育カリキュラムが実施されています。
その具体的な内容は以下の通りです。
- 幼児は安定した情緒の下で自己を十分に発揮することにより発達に必要な体験を得ていくものであることを考慮して,幼児の主体的な活動を促し,幼児期にふさわしい生活が展開されるようにすること。
- 幼児の自発的な活動としての遊びは,心身の調和のとれた発達の基礎を培う重要な学習であることを考慮して,遊びを通しての指導を中心として第2章に示すねらい(※1)が総合的に達成されるようにすること。
- 幼児の発達は,心身の諸側面が相互に関連し合い,多様な経過をたどって成し遂げられていくものであること,また,幼児の生活経験がそれぞれ異なることなどを考慮して,幼児一人一人の特性に応じ,発達の課題に即した指導を行うようにすること。
※1:第2章のねらい
(1)明るく伸び伸びと行動し,充実感を味わう。
(2)自分の体を十分に動かし,進んで運動しようとする。
(3)健康,安全な生活に必要な習慣や態度を身に付ける。引用元:文部科学省 幼稚園教育について
一読しても分かる通り、全国で統一された教育課程となっているため、オリジナリティ性が低い教育方針であることがうかがえるでしょう。
もちろん、個々の公立幼稚園が独自に設定する方針が存在する可能性はありますが、あくまでも上記の教育過程から逸脱しない範囲で保育が行なわれるという特徴があります。
・私立幼稚園
私立幼稚園は公立幼稚園と比べると、教育方針に多種多様で独創的な教育方針が組み込まれています。
そもそも運営する団体が企業から寺院まで、多種多様であることからも理解できると思います。
中には幼児教室顔負けの幼児教育を実践しているところもありますし、昔ながらののびのびした保育を実践している園もあります。
自宅から通える範囲の私立幼稚園を調べて、実際に見学や説明会に行かなければ教育方針を掴めないのが実際のところでしょう。
幼児教室は、幼稚園とセットで検討する
幼稚園に幼児教室の要素が組み込まれているところを選べば、わざわざ幼児教室へ通うことはありません。
1日のうちの集団生活や教育的指導の時間が長引くことは、幼い子供にとって大きな負担になることもあるからです。
幼稚園の生活に余裕が出てきて、子供が主体的に学べるようであれば、幼児教室の利用を検討してみてもいいかもしれません。