赤ちゃんの脳は、生まれてすぐおおよそ大人と同じような作りになっています。
生まれたその瞬間から、様々な情報をキャッチして脳は目覚ましく成長を遂げていきますが、その学習の仕組みが最新研究から明らかになってきました。
赤ちゃんの脳とは?
最新の幼児教育研究では、幼児に向けた教育は3歳からでは遅すぎると言われています。
重要なのは「生まれたその日からの人間づくり」というのが、新たな常識となっているのです。
3歳からの教育をうまく行うためには、それまでの教育が重要、と言い換えることもできます。
幼児教育の専門家が考える最も重要な赤ちゃんへの教育時期は、生まれたその日から2足歩行を開始する1歳前後まで。
この時期は、赤ちゃんのその後の人生を左右する大変重要な時期とされています。
こんな風に聞くと「話しても伝わっているのかわからないし、泣いてばかりいる赤ちゃんにどうやってコミュニケーションをとるの?」と疑問に思う保護者の方は少なくないでしょう。
しかし、赤ちゃんの脳を研究する専門家はこうした大人の感覚は、間違っていると警告を鳴らします。
その理由は、赤ちゃんの脳が、生まれたその日から1年の間に猛烈な発達を遂げていることに由来します。
脳の神経細胞同士を繋げるシナプスが急速に増えるのも、この1年間だと考えられており、2歳になるとシナプスの取捨選択がおこなわれるという研究
結果もあるほどです。
こうした赤ちゃんの脳の発達について理解を深めると、どれだけ0歳児への教育が重要なのかを、知ることができます。
次章では、赤ちゃんが言葉を理解して発語するまでの学習の仕組みを、年齢別に確認してみましょう。
言葉の開始時期に見られる子供の様子
多くの赤ちゃんは、1歳を過ぎて歩き出すあたりから簡単な言葉を話すようになります。
それまでは喃語と呼ばれる、大人には理解できない独特な言葉だけポツポツと話していた赤ちゃんが、この時期以降、話し始めると止まらなくなるほどに言葉が爆発するのです。
赤ちゃんが言葉を覚える仕組みについては、実は最新研究でも解き明かしきれないほど複雑で、未だに十分解明されているとは言えません。
また、個人差があることも特徴で、脳の障害が全くないにもかかわらず、3歳あたりになってもさほど言葉を話さないという子供も多く見受けられます。
ここでは、一般的に子供の言葉が爆発する幼児期の子供の言葉の様子をチェックすることで、子供の学習の仕組みをご紹介します。
1歳半の子供と言葉
1歳半に達すると、多くの子供が10個程度の単語を覚えます。
大人が意識的に「あれはワンワン」「おクチはここ」と話してやると、言葉の理解が著しく進み、話すチャンスを広げることができます。
重要なのは、母親を中心とした日頃から子供が慣れ親しんでいる大人の声で話しかけてやることです。
また、実際に犬を見せたり親の口を見せたりしながら、実物と言葉とを結びつけてやることも重要であるとされています。
この時期の子供は、言葉のみならず五感をフルに動かしながら学習を進めていくとされているため、本物の犬に触れ匂いを嗅ぎ、鳴き声を聞くことで、脳に適切な刺激が送られるとされています。
実際に触れることが難しいものの場合は、親の膝の上に子供を乗せてやり、絵本を読みながら言葉を教えるのもいいでしょう。
親の温もりを通して親子の絆を深めながら言葉の発達を促すことができます。
2歳の子供と言葉
2歳になると2語以上の単語を使えるようになる子が増えます。
「ママ、ネンネ」や「ワンワン、バイバイ」といった具合です。
達者な子供の中には、男の子と女の子で言葉の違いを見ることができるのもこの時期からで、「〜だぜ」や「〜だわ」など、性別を意識した語尾の表現が見られるようになります。
言葉の性差は、特に兄弟姉妹の有無で左右されることが多いと言われています。
3歳の子供と言葉
3歳ごろになると、過去や現在、単数と複数の違いを区別できるようになります。
また、多くの子供が3語以上の単語を使えるようになるので、「雨降ったから長靴履いていこうか!」や「お腹減ったからおやつが食べたい」など、おおよその意思疎通を言葉のみでおこなえるようになることが多いです。
専門家の指摘によると、相手と自分の行動が異なるような「対立表現」は、3歳を過ぎたあたりでもミスが目立つと言います。
例えば「あげる」と「もらう」などです。
達者に言葉を使いこなす3歳児でも、「このおもちゃばあばがあげたの?(正しくは:ばあばがくれたの?もしくはばあばからもらったの?)」と表現する様子が見受けられます。
こうした対立表現では、自分と相手とで視点を変えて言葉を使い分けなければならないため、相手の気持ちを推し量ったり、言葉のロジックを理解するに十分な能力が育っていない幼少期には、ミスが増えると考えられています。
こうした意味から「心の成長と言葉の発達は、2人3脚」と考えている専門家も多く見受けられます。
赤ちゃんの学習を親が適切にサポートするためのポイント
最後に、急速な発達を遂げる0歳の赤ちゃんに向けて、親が適切なサポートをするために覚えておきたいポイントをご紹介します。
愛情を持って接する
最も重要なことは、赤ちゃんへ愛情を持って接することです。
わが子への愛情は、人から言われずとも溢れてくるものですが、忙しさや疲労など大人の都合で表現内容が変化してしまうものでもあります。
赤ちゃんへたっぷりと愛情を注ぐためには、大人が工夫して心と時間に余裕を持った生活を送ることも重要だと言えるでしょう。
家族の声を聞かせる
最新の育児グッズには、忙しい保護者を助ける便利なものがたくさん出ています。
中には、親に代わって読み聞かせをしてくれたり、赤ちゃんが飽きないようにずっと楽しい音楽や映像が流れているようなものもあるでしょう。
しかし、赤ちゃんを癒し、学習効果を最も高めるのは生の親の声なのです。
赤ちゃんはすでに家族の声を聞き分けているという研究結果も報告されています。
指を使わせる
「子供の指先は第二の脳」と考える専門家は多く、指先の鍛錬が脳の発育に大きな影響を与えると提唱しています。親の指などを赤ちゃんの手のひらに近づけることで、ギュッと握り返す動きを何度も繰り替えることで、生後数ヶ月の赤ちゃんの学習をサポートすることができるでしょう。
肌に触れる
オムツ替えや抱っこの時間など、意識して赤ちゃんの肌に触れ、刺激をするようにしましょう。
「オムツ変えたら気持ちいいね」とか「肌がスベスベだね」などと、優しく語りかけることで、より一層赤ちゃんの脳への刺激を促すことができます。
追視させる
人が目でものを追うことを「追視」と言いますが、生後2ヶ月になると、赤ちゃんもこの追視を行うことができます。
音のなるおもちゃやカラフルなおもちゃを赤ちゃんの視界に入れ、ゆっくりと左右に動かしてみましょう。
この際も、語りかけることを忘れずに。目は脳と近い距離に位置し、視界からの刺激は脳へ伝わりやすくなっています。
愛情を持って接することは、赤ちゃんの心を成長させる
赤ちゃんの成長で重要なことは、技術を習得することよりも、心を成長させることにあります。
愛情をたっぷりと受けてしっかりと成長した心は、これから経験する様々な学習の礎となることでしょう。