自宅以外での保育を必要としない乳幼児を育てる家庭が選ぶ、幼稚園。
幼稚園には公立と私立が存在することは多くの保護者が知るところでしょう。
しかし、両者にはどのような違いがあるのかをご存知でしょうか?
今回は、公立幼稚園と私立幼稚園の費用を始め、保育内容や特徴の違いをご紹介します。
幼稚園の費用とは?
平成28年に文部科学省が発表した調査によると公立幼稚園と私立幼稚園で1年にかかる学習日の総額および内訳は、以下の通りとなっています。
公立幼稚園
学習費総額:233,947円
学校教育費:120,546円(51.1%)
学校給食費:20,418円(8.7%)
学校外活動費:92,983円(39.7%)
私立幼稚園
学習費総額:482,392円
学校教育費:318,763円(66.1%)
学校給食費:29,924円(6.2%)
学校外活動費:133,705円(27.7%)
※カッコ内は構成比
公立幼稚園と私立幼稚園にかかる総額を比較すると、2.1倍の開きがあることが伺えます。
しかし、私立幼稚園に通う家庭に対しては、「私立幼稚園就園奨励費補助金」と呼ばれる補助金が自治体より出る場合があります。
補助金分を鑑みると公立幼稚園と差が出なくなる家庭も多いようです。
「私立幼稚園就園奨励費補助金」とは?
私立幼稚園などに通園する幼児が入る家庭を対象にして導入されて入る補助金制度です。
保護者負担軽減事業をしている区市町村が、各自治体で定められたルールに則り補助金額を決定しています。
住んで入る自治体によって補助金が変わる他、親の収入などでも金額が細かく分かれています。
私立幼稚園に子供を通わせている家庭は、一度自分が住む自治体のホームページを確認する必要があるでしょう。
以下では、公立幼稚園と私立幼稚園の違いを確認しながらそれぞれの特徴をご紹介します。
公立幼稚園と私立幼稚園の違い
そもそも幼稚園とは?
幼稚園の違いを知る際、わかりやすいのが保育園との違いを比較することです。
保育園は「児童福祉法」と呼ばれる法律で規定された、「保育の不足を補う児童福祉施設」であるのに対し、幼稚園は「学校福祉法」によって規定された「教育機関」として位置付けられている点が大きく異なります。
子供が初めて集団生活を行う場としては、両者は同じ意味を持ちますが、幼稚園の方が“学校”としての意味合いが強い点が特徴です。
公立幼稚園と私立幼稚園の定義とは?
・公立幼稚園
公立幼稚園とは、各都道府県に存在する教育委員会が認可を行い自治体が運営している幼稚園のことを指します。
小中学校と異なり各自治体に必ず存在するわけではなく、公立幼稚園が存在しない地域があるのが大きな特徴の1つです。
現在の公立幼稚園の数は全国で3,800校程度とされています。
また、公立幼稚園で働く先生は全員が公務員となります。
教育方針は文部科学省による指導要領に則って決められているため、公立幼稚園の中では差異がない点も特徴の1つと言えるでしょう。
・私立幼稚園
私立幼稚園とは、都道府県の知事が認可を行い社会福祉法人や学校法人、キリスト教会や仏教寺院など民間によって運営されている幼稚園のことを指します。
公立幼稚園よりも数が多い点が特徴で、全国で6,700校程度が存在します。
公立幼稚園のおよそ倍近い数が運営されています。
教育方針が園ごとによって異なる点は、私立幼稚園の大きな特徴の1つと言えるでしょう。公立幼稚園と私立幼稚園の違いによるメリットとデメリット
<公立幼稚園のメリット>
公立幼稚園に通わせるメリットとして最も大きいのが、費用が安いことです。
私立幼稚園との費用の開きは、年間にしておよそ2倍になります。
先述の補助金制度がありますが、自治体によっては対象となる家庭に厳しい収入制限を設けていることもあり、該当しない家庭の多くでは私立幼稚園での安くない費用負担が義務付けられます。
私立幼稚園では独自の教育方針に則り、様々な教育カリキュラムが組まれています。
園によっては幼児には厳しすぎると感じる教育的指導を行うところもあるのが事実です。
厳しすぎる指導を懸念して転園を決める家庭があるのも事実です。
その点、全施設が国の決めた教育指導に基づき運営されている公立幼稚園では、親が厳しすぎると感じる指導は行われにくい背景があります。
多くの園でのびのびしたアットホームは幼児教育が実現されているのも、公立幼稚園のメリットだと言えるでしょう。
公立幼稚園を選ぶ場合、ほとんどの家庭が自宅から歩いて通える園を利用することになります。
通園バスを利用した遠くの施設へ子供を預けることは、親に精神的な不安が生まれることがあります。
その他にも、帰宅時にバスに揺られた子供が昼寝をしてしまい一日のリズムが崩れることを懸念する家庭があるのも事実です。
<公立幼稚園のデメリット>
私立幼稚園に比べると年間で実施される行事が少ないと感じる保護者が多い傾向にあります。
また、幼稚園の行事の多くは保護者が参加できる楽しいイベントに企画されていることが多いですが、行事が少なくなるということはその分子供と一緒に作れる思い出が減るということに繋がります。
行事の少なさを理由に公立幼稚園を選ばない家庭は実際に多いと言えるでしょう。
行事の少なさにもつながる話ですが、公立幼稚園では私立幼稚園に比べると幼児教育への熱が低いと感じられるケースが多いです。
これは先述のメリットの裏返しとも言えます。
独自のカリキュラムで毎日のように子供へオリジナルの幼児教育が行われている私立幼稚園に比べると、公立ではただ園庭やクラスで遊ばせているだけだと感じる保護者がいるのも事実。
子供にどんな風に幼児期を過ごさせたいかを、今一度家庭で考える必要があるでしょう。
<私立幼稚園のメリット>
公立幼稚園の多くでは、共働世帯を意識した運営がなされていません。
そのため、子供を午前中に迎えに行かないといけない日があったり、長期休暇が設けられていることがほとんど。
私立幼稚園では独自の運営が認められているため、時間外保育が充実している施設もあります。
幼稚園での教育を受けながら自分のキャリアをアップさせたい保護者にはありがたいメリットです。
幼児教育が充実しているのは私立幼稚園の大きな魅力ですが、中には英語や体操など習い事でしか享受できない教育に力を入れている幼稚園もあります。
幼児期にかけるトータルの費用が軽減できることもあるので、しっかりとカリキュラムを比較する必要があるでしょう。
<私立幼稚園のデメリット>
自宅近くにあることが多い公立幼稚園と比べると、近所に友達が作りにくいというデメリットが挙げられます。
昔ほど近所で幼児同士が遊んでいる姿は見かけられなくなったものの、小学校に上がった際に知り合いがいないという不安を感じる子供が多いのも事実です。
通い続けられる幼稚園を選ぶ
幼稚園を選ぶ際、やはり最優先に考えたいのは子供とのマッチングです。
子供の性格と園の雰囲気・教育方針があっていないと子供に大きな負担を貸すことになり、通い続けるのは厳しいと言えるでしょう。
入園申し込みをする前には必ず保護者と子供とが一緒に園見学へ出向き、通い続けられるイメージが持てるかをチェックしましょう。
また、立地や預かり時間など、保護者の状況と園の運営とが合っているかもチェックする必要があります。
子供だけでなく家庭環境にも合った幼稚園を選ぶことが卒業まで通い続けられる秘訣と言えるでしょう。